クン活ってなに?愛犬に必要なことなの?

こんにちは。ドッグスクールKANEKOです。

最近は色んなところで「クン活」という言葉を見聞きします。

クン活は「お困りの行動」を促す「きっかけ」になる可能性もあるため、しつけの視点から「クン活」とは「どういう行動なのか」を書いていこうと思います。

 

はじめに

犬は嗅覚から情報を得る動物なので、愛犬が鼻(嗅覚)を使う事はダメな事でも間違いでもありません。

ただ、「いつでも」「どこでも」「自由に」クン活をさせる(ニオイを嗅がせる)事には注意が必要だと思います。

クン活の目的を持ち、注意点を理解されているかどうかによって、「愛犬にとって意味のある事」にも「マナー違反」にもなる可能性があるからです。

 

クン活とは

主にお散歩中に「愛犬がくんくんニオイを嗅ぐ事」を「クン活」というようです。

『鼻からの刺激により、脳が活性化し、情報収集・危険察知・縄張りの確認や愛犬の好奇心を満たす事ができる』という点で、SNSなどでは「愛犬にとっていい事」とクン活を促すものもよくあります。

ただ、「なんのために」クン活をさせるのか、クン活のメリットやデメリットなどは事前によく考えた方がいいと思います。

 

クン活をする目的

なんでもそうですが、「なんのために」愛犬がクン活をするのか、愛犬にクン活をさせるのかはとても重要です。

あえて表現を変換すると、クン活は「愛犬に積極的にニオイを嗅がせる事」です。

「なんとなく」「みんながしているから」ではなく、明確な目的(なぜ愛犬にニオイを嗅がせるのか)をご自身、ご家族でよく考えてみて下さい。

 

お散歩ってどんなもの?

「お散歩」は、愛犬の自由な時間、愛犬の運動をする時間、人が運動をする時間、愛犬と一緒に過ごす時間など価値観や目的は人それぞれだと思います。

(お散歩について)  愛犬とのお散歩トラブル、回避するにはどうしたらいいの?

クン活中のようすを客観的にみると、散歩中に「愛犬がクン活に夢中になる = 人が放置されている」状態になります。

イメージですが、手を繋いで一緒に過ごしている友人・恋人・家族が「一緒にいる自分」ではなく、「ひとりで」携帯に夢中になり、ずっと携帯をいじっていたら悲しくなってしまう気がします。

「相手が楽しんでいるからいい」のかもしれませんが、携帯があれば自分が「一緒に」いなくてもいいのかなとも思ってしまいます。

お散歩の目的にもよりますが、愛犬もご家族もお互いに「目の前の人(犬)と一緒に過ごす事」を大切にして欲しいと思います。

 

愛犬に自立や自主性は必要?

家庭犬の場合、人の子供とは違い、自立する(ご家族から離れて独立する)事はないため、生涯ご家族が愛犬の世話や管理をします。

なので、クン活をして、「愛犬自ら」情報収集や危険察知をするなど、「愛犬の自立」を促す(愛犬がひとりで生活できるようにサポートする)必要はないと個人的には思います。

また、犬は集団生活をする動物のため、個体差はありますが「序列」(人や犬との関係性)を気にします。

そのため、人と一緒に生活する際は、人が愛犬よりも序列の上になり「愛犬の事は守る」から愛犬には「人とのルールを守る」ように「しつけ」をします。

序列が築けている(ご家族の立場が上になる)と、愛犬はご家族に身を委ねる(任せる)事ができるため、なにかあっても「人に守ってもらえばいい」という思考になり、歩いている道が危険かどうか、誰の縄張りかなど気にせずに、ご家族とリラックスしてお散歩ができます。

しかし、序列が逆転する(愛犬の立場が上になる)と、「自分(愛犬)が家族を守らないと!」と家の中や周辺をパトロールしたり、常に周りを警戒し神経を尖らせたり、お散歩中には先陣を切って引っ張りながら情報収集や危険察知(クン活)に必死になり、縄張り意識が強くなるなど、愛犬は「家族を守るために必要な仕事」で手いっぱいになり、精神的にも疲弊しやすくなる可能性があります。

また、愛犬に「自主性」を求めると、「愛犬が主導して好きな事をする」ようになるため、人に興味がなくなりやすいです。

自由な環境で、愛犬自身が求める(望む)生活ができ、愛犬の要求が全て自己完結すると、特に人の助けなど「人と一緒になにかをする事」を必要としなくなりやすいからです。

愛犬がご家族に興味がなくなると、「嫌いにならないで欲しい」と愛犬に媚びたり、愛犬の機嫌をうかがったり、過度に甘やかしたり、必要な場面で必要なしつけをしない(叱らない)ようになりやすくなります。

そうなると、愛犬がより我儘に(自己中心的な主張をするように)なり、愛犬の天下になるとより人を無視する、ご家族を序列の下に見るようになり…と、どんどん関係性が悪化しやすい傾向があります。

これはほんの一例ですが、愛犬に自主性やルール(制限)のない自由を与えた結果、人を無視する(人に興味がない)犬が増えている印象があります。

 

クン活によって起こりやすいお困り事

自主的になのか、結果的になのかは別として、実際に愛犬がクン活をよくしている方の相談内容で多いものの一例を書いていきます。

マーキング

ニオイを嗅ぐ事により、他犬や縄張りを意識しやすくなります。

マーキングはオスだけでなく、メスでもします。

1回のお散歩中に複数回排泄するなら、マーキングの可能性があります。

膀胱の機能により、頻尿傾向のある仔や病気のサインの場合もあるので、気になるようなら病院での診察や検査をおすすめします。

引っ張り

「引っ張る = 愛犬主導で歩いている」状態です。

クン活で「愛犬の好きなように動く事」を「許可」しているため、引っ張りやすくなると思います。

拾い食い(誤飲・誤食)

ニオイを嗅いだ先に気になるものがあれば口に入れてしまう事もあると思います。

これからの季節はドングリ、落ち葉、木の棒などに反応する事があるかもしれません。

悪意を持って危険なものを置く人もいるため、十分に注意が必要です。

草むらへ入る

「ニオイを嗅ぐため」や「ニオイを追った結果」に草むらへ入る事があると思います。

草で眼球などを傷つけてしまう事や、除草剤によるトラブル、ノミダニのトラブルなどがあります。

人に興味がない

愛犬が好きに動いているため、特に人を意識する事も、人を頼る事もしなくなりやすいです。

 

嗅覚を活かした仕事

クン活という言葉ができるずっと前から、作業目的を持って「嗅覚」のトレーニングをして、仕事をしている犬達がいます。

嗅覚を活かした仕事とは、どんなものがあるのか、一例を書いてみます。

警察犬

各都道府県によって違いがありますが、埼玉県警の場合、直轄警察犬(警察が所有・訓練・管理をする)と嘱託警察犬(民間の犬と公認訓練士に依頼する)に分かれています。

警察犬の仕事は、警戒作業、足跡追及(そくせきついきゅう)作業、臭気選別(しゅうきせんべつ)作業の3部門に分かれています。

警戒作業

犯人を襲撃する作業をします。

日本では警備犬としての依頼が多く、襲撃で活躍する場面は少ないですが、アメリカなどでは実際に仕事をしている様子が動画などでみられます。

足跡追及作業

人の足跡のニオイを嗅ぐ作業をします。

どういうルートで移動したのか、行方不明者の捜索や事件現場での足どりなどを知るための仕事をします。

スクールの現役看板犬たちはみんな警察犬ですが、足跡追及作業で合格しています。

(毎年試験をして合否判定が出ます)

臭気選別作業

遺留品が犯人(容疑者)のものと一致するかどうかを確認する作業をします。

DNA鑑定の精度が増し、現場で活躍する機会は減っているかもしれませんが、「警察犬の仕事」を披露する場では、正確性や作業内容が1番わかりやすいと思います。

災害救助犬

災害現場で仕事をします。

瓦礫の下などに閉じ込められてしまった人などを探して「ここにいる」と吠えて知らせます。

麻薬探知犬

空港などで仕事をします。

荷物の中や、通行人から「麻薬」のニオイがしないか確認します。

荷物の時は吠えて知らせる事もあるようですが、対人の場合は対象人物の側で座る事が多いようです。

猟犬

最近よくニュースになる熊や猪などの居場所をみつける仕事をします。

対象動物をみつけたら吠えて知らせます。

 

目的の有無

上記は極端な例かもしれませんが、同じ「ニオイを嗅がせる事」でも、目的を持って作業をしているのか、「ただ嗅がせるだけ」なのかによって、愛犬の意識や態度、周りの方からの理解などにも違いがあると思います。

自分が追及の練習をしている時に「そんなに犬にニオイを嗅がせて!」と言われた事があります。

「警察犬の練習中です」と説明しますが、「なんでそんな事をする必要があるのか?」という視点は犬を飼っている人はもちろん、周りの人も必要なのかなとも思います。

地域によって違いがあるかもしれませんが、自分の行動範囲内では、まだまだ犬のマナー違反が多く、人の畑に入っての排泄や、「フンの始末をしましょう」の看板前に排泄物がそのまま放置されている事も少なくないです。

小さいお子さんが遊ぶ公園でのマーキング、排泄物の放置なども平気でする人もいます。

「なんのために」その「行動」をさせているのか、「みんながやっているから」ではなく、個人個人がよく考えて行動をしていただければと思います。

 

さいごに

クン活のメリット(おすすめする理由)は多く目にする事があったので、トレーナー(訓練士)目線でのクン活の必要性やデメリットについて主に書いてみました。

警察犬の活動をしていると、「人の力」や「機械の力」では難しい場面で能力を発揮してくれる事が多々あります。

警察犬の現役引退後、足が弱って少し呆けてしまったボルトが、咲やバジルの練習コースのニオイを察知すると積極的に正確に嗅ぎとって歩き続けていたくらい、ニオイの刺激は強く楽しいものなんだと思います。

ただ、「ルールがない = 全て自由」なクン活は愛犬のお困りの行動を促すきっかけや、その行動の強化、周りの方の迷惑やマナー違反になる可能性もあるので、「なんのために」クン活をする(させる)のかをよく考えるきっかけにしていただければと思います。