愛犬は大丈夫?分離不安ってなに?

こんにちは。ドッグスクールKANEKOです。

愛犬の室内飼育の増加や、愛犬に対する価値観の変化によって「分離不安」になる犬が増えている気がします。

全てのお困りの行動に共通しやすいですが、特に分離不安はご家族との関係性、生活環境、生活習慣に起因するケースが多いです。

 

はじめに

分離不安はお困りの行動のひとつですが、「分離不安症」という愛犬の病気のひとつでもあります。

病院で相談すると「病気」と診断されるため、程度によっては薬を処方される事もあるようです。

ご家族の価値観や分離不安の程度によりますが、薬を飲む前に、生活環境や生活習慣の調整やトレーニングなどで未然に防ぐ事や、軽度であれば緩和や改善をする事も可能です。

愛犬との関わり方についてご家族で考えるきっかけにしていただければと思います。

 

分離不安とは

愛犬がご家族に依存し「離れられなくなる」状態の事です。

ご家族と離れられなくなるため、お留守番ができず、ご家族が不在時に吠え続けて近所迷惑になる、排泄物を撒き散らす、精神的に不安定になり震える、ホテルやサロンなど各施設やサービスが利用しにくくなる(利用できなくなる)など、ご家族の行動範囲が制限されたり、愛犬ができる事や利用できるもの(サービス)が減ってしまったりします。

また、常同行動(グルグルまわる 等)、尻尾を追いかける、自傷行為(尻尾を噛む、足を舐める 等)など、愛犬自身の精神状態にも影響が出てしまいます。

 

分離不安になりやすい環境

ルールのないケージレス(フリー)で生活をしていると、そうでない環境に比べて分離不安になりやすい傾向があります。

愛犬の「ひとりの時間」がなく、人との距離が近くなり、「人の側で過ごす事」が当たり前になりやすいからです。

留守番時にハウス(クレート)を使用している方は増えていますが、「ご家族の在宅時」に「愛犬がハウスする時間」があるかどうかも重要だと思います。

共働き世帯が多く、ご家族が仕事の日は日中お留守番をしている愛犬は増えていますが、「お留守番は静かにできるのに、家族が家にいると愛犬がうるさくて離れられない」という状況があるからです。

仕事が休みの日など、ご家族が在宅時に「常に愛犬と一緒に過ごす」など愛犬との距離が近いと、「ご家族が家にいる時はずっと側にいられる」と愛犬が勘違いしやすく、ご家族が自宅(敷地内)から出ると諦めて大人しくお留守番できるのに、ご家族が在宅していて、他の部屋に行くと吠えたり鳴いたりする「愛犬ひとりでのお留守番はできる」分離不安が増えているように思います。

 

分離不安の難しいところ

分離不安は「愛犬が」ご家族と離れられない事と書きましたが、実は「ご家族が」愛犬と離れられない、愛犬に構い過ぎる「共依存」のケースが少なくないです。

そのため、愛犬をお預かりして、愛犬に「人との距離感」や「ひとりでハウスで過ごす事」を教えても、ご家族の愛犬への依存がそのままだと、愛犬がスクールで頑張って得た事も、お預かり前の状態に「元通り」になったり、1番避けたい状態ですが、お預かり前より「依存の強化」をしてしまう可能性もあります。

トレーナーは愛犬だけでなく、ご家族にも練習方法や生活環境の調整、愛犬への接し方をお伝えしたり、一緒に練習したりしますが、ご家族の価値観や依存が変わらないと「上辺だけ」で伝わる事になり、根本的な解決にはなりにくくなってしまいます。

しつけやトレーニング全般に言える事ですが、特に分離不安は「お互いに依存」してしまいがちなので、「自分(ご家族)と離れる事が可哀想」「一緒にいなきゃ可哀想」という思考になりやすい部分がとても難しいです。

また、依存のきっかけは、愛犬からではなく、ご家族が愛犬に依存し始めるケースが多いです。

愛犬の分離不安が強ければ強いほど、そのご家族の「愛犬に対する依存」も強いケースが多く、無自覚で生活している方はもちろん、ご家族に依存している自覚があっても生活や価値観を変えられない方もいます。

 

トレーニングでできること

スクールではまず、「人との距離を保つ事」「愛犬ひとりの時間をつくる事」「ハウスに慣れる事」を教えていきます。

分離不安は物理的にも精神的にも愛犬とご家族の距離が近い事が要因のひとつになり得るため、「お互いに離れる時間」を意識的につくる事が必要だと思っています。

もちろん、自傷行為をしてしまう仔や分離不安の程度によってケースバイケースのため、上記は一例です。

「愛犬ひとりの時間」を「ハウスで静かに落ち着いて過ごす事」ができるようになったら、ステップアップで「人に合わせる事」を教えます。

愛犬に依存してしまうご家族は、愛犬の「一挙手一投足」を気にして「愛犬のペース」に合わせようとする傾向がある気がします。

なので、スクールでは、常に愛犬のペースで愛犬のしたい時に愛犬の望む事を「してあげる」のではなく、愛犬が「人の生活に合わせる事」を愛犬が理解するまで丁寧に教えています。

 

気をつけて欲しい事

愛犬がご家族に依存している姿は、愛犬が低月齢の時や、ご家族の気持ちに余裕がある時は「自分を頼ってくれて可愛い」と思われる方もいますが、ご家族の仕事や育児などが忙しく、ご家族に余裕がなくなったり、生活環境が変わったりしたタイミングで愛犬の依存を「鬱陶しい」と感じるようになる事があります。

1度「鬱陶しい」存在になると、愛犬の色んな事が嫌になり、お金をかけるのも世話をするのも放棄したくなりやすい傾向があるようです。

悲しいですが、ご家族の生活に変化があったり、愛犬が高齢になったり、お子さんが成長して愛犬への関わり方に変化があったりした時に「手に負えない」「嫌い」「いらない」「うるさい」「どこにでもついてきてうざい」と相談される事が少なくないです。

愛犬は「今まで通り」なのに、ご家族の受け取り方が変わると「今まで許されていた事」が「許されない事」に180度変わってしまうケースです。

愛犬はそれまでの記憶や学習して得た事は「リセット」できないため、「なんでダメなの?」と精神的に不安定になり、自傷行為や常同行動に発展してしまう可能性があります。

愛犬の依存を「可愛い」と受け入れるなら、愛犬がどんな状態になっても亡くなる時まで責任を持ってそれを貫いて下さい。

貫けないのであれば、可愛い時期にだけ無責任に甘やかす事はせず、ご家族が「して欲しくない事」を愛犬が覚える前に「しつけ」をして「して欲しい事」を教えてあげて下さい。

 

分離不安を防ぐためには

愛犬もご家族も「それぞれ別々に過ごす時間」を意識的につくって下さい。

どんなに仲のいい友人、恋人、家族でも「ずっと一緒」は価値観の違いなどからトラブルが起きやすく、適度に「お互いの時間」が必要な場面もあると思います。

愛犬も同様に、「ひとりで落ち着ける時間」が必要なので、まずは「静かに落ち着ける場所づくり( =ハウスに慣れる練習)」をしてみて下さい。

愛犬を迎える前に、愛犬と一緒にしたい事や愛犬との生活をイメージされていると思いますが、実際に生活すると「イメージ通り」の生活ができない部分が多少なりとも出てくると思います。

その際に、ご家族の希望を通すのか、愛犬の性格や性質に合った生活や方法に切り替えるのか、とても重要なターニングポイントになります。

少し話はそれますが、「夜に愛犬と一緒に寝ると分離不安になりますか?」と聞かれる事がありますが、一概に「一緒に寝る = 分離不安になる」とは言い難いです。

一緒に寝るだけか、寝る時を含めて常に一緒にいるのかによっても違うからです。

 

優しい虐待

愛犬を過度に構う、過度に干渉する事は「優しい虐待」のひとつと言われています。

意外かもしれませんが、ご家族は「愛犬にとっていい事」としている事が、実は愛犬にとってよくない事もあり、愛犬を故意に傷つけ痛めつける「虐待」と区別し、「優しい虐待」と表現される事があります。

愛犬を放置し、世話をしない事(ネグレクト)も程度によっては虐待に当たりますが、過度に構う、干渉する、世話をし過ぎる事も虐待になり得るからです。

愛犬とご家族も「適度な距離」は必要なため、ぬいぐるみのように抱き続けたり、ずっと愛犬を見張ったり、どこに行くにも一緒に連れまわしたりという行動はお互いに依存しやすく、愛犬が落ち着く事ができなかったり、愛犬にとっては苦痛の場所や経験をさせてしまったりする可能性があるため、おすすめしません。

「愛犬のため」と言えばなにをしてもいい訳ではなく、どんなに可愛くても愛犬はぬいぐるみでもおもちゃでもファッションの一部でもありません。

ご家族が「したい事」が「愛犬にとって必要な事なのか」をよく見極め、愛犬がご家族や人と生活する上で必要な事をしてあげて下さい。

 

さいごに

愛犬のお困りの行動は、愛犬自身が元々持っている性質や犬種による特性もあるため、依存しやすい犬種やタイプはありますが、特に分離不安の場合は「ご家族との生活」に起因しているケースが多いです。

ひと言で「分離不安」といっても愛犬の反応の仕方、自傷行為の有無、ご家族構成、生活環境や生活習慣などによって練習方法はケースバイケースです。

分離不安かな?と思ったら、愛犬との接し方、生活環境や生活習慣の見直しをおすすめしますが「なにをどうすればいいかわからない」事も多いと思うので、まずはご相談下さい。