愛犬をしつけのしやすい仔に育てるコツは?

こんにちは。ドッグスクールKANEKOです。

「しつけのしやすさ」は犬種による特性や個体差による愛犬の先天的な部分はもちろんありますが、ご家族と過ごす後天的な部分でも違いが出やすいです。

愛犬への接し方や生活環境により、愛犬を「しつけをしやすい状態」にできると、愛犬との生活が充実しやすくなり、愛犬の個性をいい方向に伸ばす事もしやすいです。

 

はじめに

お問い合わせで、「どのくらい期間(回数)が必要ですか?」というご質問が多く、現状の様子、生活環境、ご家族の接し方などにもよりますが、事前準備の有無でもかなり差が出ると思います。

また、ご家族が思う「できる」状態と、実際にお会いした時の状態で認識の差が生じているケースもあります。

しつけがしやすい仔にはいくつか特徴があり、事前の準備により、しつけのしやすい状態にできる可能性があります。

 

しつけがしやすいってどんな事?

人が褒めた時に、愛犬が「褒められた」感覚がある事が大前提ですが、「人が伝えたい事」の伝わりやすさだと思います。

しつけは「ルールを教える事」なので、して欲しい事は褒め、して欲しくない事は叱り、本来して欲しかった「正解の行動」を教えていきます。

褒める場面で、人が褒めようとした行動に対して、愛犬が「褒められてる」と受け入れられるかどうかがしつけのしやすさのひとつだと思います。

例えば、人が撫でて褒めようとした時に、触られ慣れてない犬は「触られる = 褒められる」状態ではないため、「褒められてる」感覚にはならず、褒める事ができないからです。

 

しつけがしやすい犬の特徴

今まで関わってきた中で、「しつけがしやすい」と感じる仔は「しつけをする準備」ができている仔が多いと思います。

その一例を書いてみます。

人に興味がある

「人に興味がある = 人を意識している = 人に注目しやすい」状態です。

人を意識できると、その分周りへの意識をしにくくなるため、外出時やお散歩の時も人の指示(コマンド)を聞きやすいです。

精神的に落ち着いている

「落ち着ける場所がある = 冷静になれる時間」がある状態です。

興奮状態を継続させてしまうと、興奮が増していくためコントロール不能になりがちですが、「冷静になる場所」があると興奮状態を一旦リセットしやすいです。

 

しつけをする準備とは?

ご家庭内で「しつけをする準備」ができている仔とそうでない仔では、スタートラインが異なり、トレーニングの内容や進み方にも違いが出やすいと感じる事があります。

例えば、人の子供の場合、小学校入学前に「人(先生)の話を聞く」「返事や挨拶をする」「椅子に静かに座る」「自分の事は自分でやる」など各ご家庭で「学校生活を送る( = 学校のルールを守る)ための準備」をすると思います。

準備を何もしていない子が「今日から小学生なんだから全部やってね!」と1度に全部をするのは大変だと思うからです。

犬も同じで「さあ、今日からしつけをするよ!」と全てをやろうと意気込むのではなく、しつけの優先順位をつける事や普段から少しずつ「下準備」をする事をおすすめします。

 

準備のはじめ方

では、具体的にどんな事を準備すればいいのか?

一例を書いていきます。

色んな場所を色んな触り方をする

愛犬と生活していると「愛犬を触る事」は何気なくしている生活の一部という方も多いと思います。

その時にいつも同じ場所を同じように触るのではなく、触り方や触る場所を変えてみて下さい。

「お医者さんごっこ」で軽く皮膚を摘んでみたり、「シャンプーごっこ」でシャンプーの真似をしてゴシゴシする仕草をしたり、「色んな事」を想定して遊びながら「どんな触り方でも平気」にすると安心だと思います。

人の予定や生活に合わせる

「愛犬が」要求した時、要求した事に付き合うのではなく、「ご家族が」決めた時間にやりたい事を愛犬が合わせる生活をしてみて下さい。

例えば、愛犬が「遊んで!」と吠えるから遊ぶのではなく、ご家族の仕事・家事・勉強などがひと段落してから「一緒に遊ぶ時間」にするイメージです。

人と一緒に遊ぶ

「人を意識しない = 人に興味がない = 人を無視する」仔が特にトレーニングがしにくいです。

人と関わる状況や経験が少ないと、愛犬は「人と一緒にいる事」に対するメリットがなく、人のいう事を聞かない・一緒に遊べないようになる傾向が強いため、しつけをしよう!と思った時にハードルが高くなりやすいです。

例えば、愛犬におもちゃを渡した時に「遊んで」と「人と遊ぶ事」をするか、おもちゃを持って離れて行き「ひとりで遊ぶ事」をするか、愛犬の行動をチェックしてみて下さい。

落ち着ける場所をつくる

「ハウス(クレート)」など、愛犬が静かに落ち着いて過ごせる場所をつくってあげて下さい。

愛犬が常に動きまわっている状態は「元気」で「楽しそう」にみえるかもしれませんが、「落ちつく事ができていない」状態のため、精神的にも肉体的にも疲弊してしまう可能性があります。

 

準備をしないとどうなるの?

しつけの準備ができていない場合、しつけをしない場合、どんな事が想定されるか、一例を書いてみます。

触れない場所がある

愛犬を触っていると「キャン」と鳴いたり「触らないで!」と噛む素振りや甘噛みをされた経験がある方もいると思います。

その時に「嫌なんだね、ごめんね」と嫌がる場所を触る事をやめたり、愛犬が嫌がる触り方を避けるようになると、「鳴いたり噛んだりすれば嫌な事をやめてもらえる!」と愛犬が勘違いする可能性があります。

そういう生活や接し方を繰り返していると、愛犬は「嫌な事には全て叫んだり噛んだりすればいい」と学習し、ご家族が本来したい事ができず、愛犬のご機嫌を伺いながらの生活をせざるを得なくなる可能性があります。

「自分(家族)が我慢すればいいだけだから」と思われるかれませんが、サロンでお断りをされたり、嫌がる場所は綺麗にしてもらえなかったり、病院では必要な検査や処置をしてもらえなくなる可能性もあります。

愛犬中心の生活になる

「愛犬が」したい事を望むまましてあげる生活をしていると愛犬中心の生活になりやすいです。

例えば、どんな天候でも散歩に行かざるを得なかったり、どんな時間でも要求に応えないといけないようになったり、ご家族が愛犬の機嫌や要求に左右されるようになりやすいです。

人を無視する

人と生活する上で、「人に対するメリット」がないと愛犬が独自ルールを作り、人に無関心になりやすいです。

そういう仔は人と一緒に遊ぶ事、人と一緒に過ごす事を好まないため、「ただ同じ空間にいるだけ」の生活になる可能性があります。

ご家族や人に対して特に魅力を感じず、興味がない仔が多いです。

人に興味がないとその分周りに興味を示しやすくなり、お散歩などが大変になりやすいです。

落ち着きがない

常に落ち着かずに動き回っていると、眼が見開き、神経質な状態になる仔が多いです。

吠える行動が多く、インターフォン、来客、家の周りを通る人・犬・乗り物などにも吠え、ご近所からのご指摘がある場合もあると思います。

また、常に人と一緒にいる事が多いと人に依存し「分離不安」になる可能性もあります。

 

準備の有無でのトレーニングの違い

スクールでトレーニングをする場合、はじめての環境(スクール)で知らない相手(トレーナー)と練習をする事になります。

その中で「褒めよう」という時、準備ができている仔は触って褒める事ができるのですが、準備ができていない(触られ慣れていない)仔は「触られる = 褒められる」状態ではないため、そこでパニックになったり、怒ったり、叫んだりという反応をする事があります。

「触られる = 嫌な事」という仔からすると、本来褒めるためにしている事が逆の意味に伝わってしまいます。

また、人に興味がある仔は「次はなにするの?」と積極的な傾向がありますが、愛犬の独自ルールで自由に生活する事しかしていない仔は「一体なにをされるんだろう?」という不安・拒絶・拒否の反応をする傾向があります。

ハウスに慣れていない仔は、ハウスの中にいるだけで緊張したり硬直してしまう仔もいます。

 

愛犬への基本的な接し方

「愛犬が喜ぶ事」を積極的にするのではなく、「愛犬に必要な事」を優先的に教えてあげて下さい。

「喜ぶから」と愛犬の都合や機嫌に合わせた生活をしていると、無意識に「愛犬が嫌がる事」を避ける傾向があり、いつの間にか愛犬の思い通りの生活が成り立ってしまいます。

まずは愛犬の色んな場所を色んな触りをして、「触られる事」に慣らして下さい。

普段の生活でも、足を拭く(洗う)、ブラッシング、爪切り、耳掃除、歯磨きなど「愛犬を触る」場面はあると思います。

例えばその時に「爪切りはトリマーさんに任せるからしなくていいや」ではなく、足を拭く時やブラッシングの時などに爪も触ってみて下さい。

愛犬がどこを触ると嫌がるのか?どういう触り方を好むのか?などがわかると思います。

触り方も優しく撫でるのは良くても、それ以外を受け入れない仔も多く、優しく撫でるだけでは不十分な場面が多々あります。

例えば、病院でワクチンを打ったり、採血をする時は保定され、皮膚を軽くつままれる事があり、レントゲンやエコーなどの検査をする時は寝転ぶ姿勢が必要な場合があります。

愛犬がパニックを起こしたり、拒絶したり、他人を傷つけたりしないように、日頃から色んな事を想定した練習をしてみるといいと思います。

 

学習能力について

「うちの仔はおバカだから…」というお話を耳にする事がありますが、よくよく話を聞くとちゃんとその対象の犬は「学習している」事があります。

例えば「いつもスリッパをボロボロにする」場合、スリッパをボロボロにする行動が「人に都合が悪い」ため、その行動をする愛犬を「おバカ」と表現していますが、愛犬はスリッパをボロボロにする事が楽しい事で、特に「ダメな事」と教えられてないから好きに破壊して遊んでいるだけだと思います。

愛犬目線では、「なんでも好きにしていいよ」と自由を与えられているので、「いつでもスリッパで遊んでいい」と理解している状況だと思います。

この場合、スリッパがあっても噛んだり遊んだりしちゃじゃダメだと徹底的に教えるか、愛犬が遊べないようにスリッパをしまうか、愛犬の行動を見られない時はハウスするか、ご家族側がなにかアクションを起こす必要がある場面だと思います。

「学習」と聞くと「頭がいい・悪い」「理解しやすい・しにくい」というイメージがあり、主に「しつけを覚えやすいかどうか」にフォーカスしがちです。

ただ「お困りの行動」も普段の生活から繰り返された結果の「学習」で得たケースもあるため、お困りの行動をしているからおバカで、お利口さんにだけ学習能力がある訳ではありません。

人にとって都合がいいかはどうかは置いといて、愛犬の行動はほとんど「学習」で得た行動が多いため、個体差はありますが、学習能力はどの仔でも備わっているものです。

 

表裏一体

しつけがしやすい仔は、「学習能力が高い」「理解するのがはやい」というイメージがあるかもしれません。

実際にそういう仔はトレーニングの進みが早い事が多いですが、「学習能力が高い = すぐに覚える」ため、いい事は勿論ですが、そうでない事(本来して欲しくないイタズラなど)もあっという間に覚える仔が多いです。

覚えがゆっくりな仔はいい事もそうでない事もゆっくりなので、ご家族が異変に気づいてから回避する事ができるケースもありますが、覚えが早い仔は「いつの間にか」お困りの行動が強化されているケースもあるので、どちらも一長一短だと思います。

覚えがはやいのがいい仔で、ゆっくりな仔がダメではなく、逆も然りです。

 

さいごに

しつけをする際は「教える事」に着目しやすいですが、実は普段の生活からできる「下準備」があります。

愛犬は「人と生活する事」が大前提なので、愛犬には「人と生活する上でのルール」を教える事が必要です。

「人を無視する事」は覚えて欲しくないため、普段の接し方や生活環境を整え、「人と一緒に」「人に合わせた」生活ができるといいと思います。

ただ、しつけがしにくいタイプもいるため、なにか違和感を感じたり、しつけにくいと感じたら、早めにご連絡いただければと思います。