愛犬が「可哀想」にならないためには、何をすればいいの?

こんにちは。ドッグスクールKANEKOです。

色んな方としつけのお話をする中で「可哀想」という言葉をよく聞く機会があります。

では、愛犬にとって可哀想な事はどんな事があるのかを書いていこうと思います。

 

はじめに

「可哀想」というひと言ですが、ご家族視点と愛犬視点では違いがあると思います。

それがどちらの視点のもので、一時的なものなのか、長期的なものなのか、一例を挙げて書いてみます。

 

ご家族が可哀想と思いやすい事

細かく書くと多くなるので、以下の3つに分類してみます。

「今までの生活」を変える事

愛犬にお困りの行動がある場合、その一因に「生活環境」が関わる事があります。

環境の調整を提案する事がありますが、環境の変化によって愛犬にストレスがかかる可能性がある事もお伝えします。

その際に「ストレスがかかって可哀想」という方もいます。

環境の変化によるストレスがかからない今の生活(お困りの行動もそのまま)がいいのか、

一時的なストレスはかかる可能性はあるけど、お困りの行動の改善を優先するか、ひとつの分岐点になります。

愛犬の行動を制限する事

行動の制限とは、愛犬を管理しやすい環境を作る事です。

今後の予防やトラブル回避など「いざという時」に備えてできる方がいい事なので、よく提案しています。

ハウス(クレート)に慣れさせる事がベストですが、ハウスに対して抵抗がある方がいます。

ハウスは「狭い所に閉じ込めて可哀想」と言われる事もありますが、ハウス生活に慣れているとハウスは「落ち着ける場所」になり、周りの環境がある程度変わっても精神的に不安定になりにくい利点があります。

車の移動時や飛行機の輸送時にもハウスは利用される事が多く、災害時などはハウスに入れるか否かで避難所の利用有無が異なる場合があります。

愛犬に我慢をさせる事

我慢とは、ご家族や愛犬に関わる人がどこをどんな風に触っても何をしても「受け入れられる」ようにする事です。

愛犬との関係性をつくる過程で必要不可欠な事です。

しつけはルールを教える事ですが、基本をおさえていればあとは各ご家庭でのオリジナルルールはあっていいと思います。

ただ、「全て愛犬任せ」にしていると様々な問題やトラブルが起こる可能性があるため、はじめにご家族が作ったルールをある程度教えてあげる必要があります。

その中でストレスがかかったり我慢する場面はありますが、必要な事を習得する過程の一時的なものです。

ここが「可哀想」になりやすく、大きな分岐点のひとつになりやすいです。

 

愛犬が可哀想になりやすい事とその理由

「可哀想」と必要な事をしてあげなかった場合に愛犬に起こりうる事の一例を書いてみます。

触れない場所がある、触れない人がいる

「可哀想だから嫌がる事はしない、触らない」

診察やシャンプーなどができなくなる可能性があります。

触られるのが嫌なのか、その部分が痛いのかがわからないため正確な診察・現在・診断ができない可能性があります。

ブラッシング・シャンプーができない、足を拭けないなど日頃のお手入れが困難になる可能性があります。

落ち着ける場所がない・常に動いている・周りを気にしている

「ハウスに閉じ込めるのは可哀想、家中好きな場所にいけるようにする」

愛犬の行動範囲全てが「縄張り」になり、愛犬が神経質になり、ちょっとした事でも過剰に反応したり精神的に疲弊したりする可能性があります。

唸る・噛む(咬む)

「可哀想だから我慢させない」

常に愛犬の思い通りになり、人と犬の立場が逆転したり、自分の意にそぐわない事があると唸ったり噛んだりするようになる可能性があります。

その結果、愛犬に関われる人が減ったり、病院・サロン・ペットホテルなどで利用をお断りされる可能性があります。

他人、他犬、車などに吠え続ける

「可哀想だから叱らない」

「叱られない=してもいい事」と勘違いした愛犬は自己主張を強くするようになる可能性があります。

ご近所からのクレームやお散歩時などのトラブルに繋がる可能性があります。

お散歩で引っ張る

「お散歩は愛犬の自由な時間、制限するのは可哀想」

あちこち引っ張ったり、過度な興奮に繋がりやすいです。

ゼーゼーハーハー興奮している犬は他犬を刺激しやすいため、相手によってはケンカに発展する可能性があります。

気になる対象をみつけると突発的に走り出し引っ張る事もあり、ご家族が転んだり引きずられる可能性があります。

これからの時期はノミダニや除草剤のトラブルになる可能性もあります。

なんでも口に入れる

「愛犬は好きに動き回らなきゃ可哀想」

愛犬の行動範囲を制限しない場合、誤飲に繋がる可能性があります。

ご家族の食事中、愛犬の留守番時、お散歩中など「ご家族が気付かない間」に盗み食いや誤飲している事があります。

いつ、どこで、何を口にしたかわからない事も多いと気がします。

口にしたものの大きさや材質によっては緊急手術の必要や最悪命に関わる可能性があります。

 

愛犬にとって可哀想な状況

ご家族は「問題ない」と思っていても、愛犬が無理をしている、愛犬に負担がかかっている、愛犬が精神的に疲弊している場合があります。

一部勘違いされている方がいますが、犬は常に元気動き回っているのが「普通」ではありません。

愛犬が飛びついたり、吠えたり、噛んだり、引っ張ったりしていてもご家族視点では「許容範囲」かもしれませんが、周りの方は同じ価値観ではない事もあると思います。

ご家族は気にされていなくても「ご近所からのクレームがあったから」「〜でトラブルがあったから」と他の人がきっかけでご相談を受ける事もあります。

 

可哀想にならないために

発想の転換をしてみて下さい。

しつけをしている時に愛犬が嫌がったとしてもそれは「一時的なもの」です。

「一時的」に我慢やストレスはありますが、しっかりと必要なルールやマナーを教えてあげる(しつけをする)のか、

「可哀想」だからしつけはせずに愛犬の好きにさせて「長期的」なストレス、お困りの行動の強化、孤立、ご近所からの苦情などを受け続ける未来を選択するのか、

極論ですが、どちらが「愛犬にとって」可哀想なのかを1度考えていただければと思います。

嫌がるからしない、我慢は可哀想というと「愛犬想い」に聞こえるかもしれません。

ただ、愛犬が嫌がる事や我慢の対象が生きてく上で必要不可欠な事なら、「嫌な事」のままにせずに我慢を教えたり、「なんて事ないな」と慣らしてあげる方が愛犬のためだと思っています。

動物病院でどこをどういう風に触られても大丈夫なように「日頃から」愛犬の色んなところを触ってあげて下さい。

シャンプーやトリミングなど愛犬の手入れができる方もいると思いますが、可能であればトリマーにお願いしてみて下さい。

ご家族とは違う人に触ってもらういい機会でもあり、常に一緒に過ごすご家族だと見落としがちな小さな違和感や変化に気付いてくれるプロもいます。

 

勘違いしがちな事

愛犬のマナー違反や問題となりうる行動(噛む・吠える・動き回るなど)を指摘されると、

“お金を払ってるんだからいいじゃない!”

“どんな犬でも上手に扱うがプロでしょ?”

と思う方もいるかもしれません。

ただ、獣医は病気や怪我を診たり治すプロで、トリマーは美容全般のプロです。

犬の扱いが上手い方、そうでない方は個人差があると思いますが、本業「」の部分だと思います。

プロが本業で100%の力を発揮するためには、愛犬のしつけは必要不可欠だと思います。

どこを触っても嫌がらない、静かに落ち着いていられる犬だと100%発揮して貰えるけど、

触れただけでパニックになったり暴れたり噛んだり絶叫したりしてしまう、あちこち動いて大人しくできない犬では作業をするために時間や労力が割かれてしまい本来の力を発揮して貰えない可能性があります。

プロに100%の力を発揮してもらえないのは愛犬もプロも「可哀想」だと思います。

そして、トレーナー(訓練士)は犬のしつけのプロです。

ただ、愛犬のトレーニングはできても、ご家族の意識が変わらないと愛犬の努力が全て無駄になる事もあります。

なので、愛犬だけでなく、ご家族も一緒にいい方向へ変わっていただけるようにサポートしています。

 

さいごに

「可哀想」は、「愛犬のため」と言うオブラートに包んだ「やらないため」「やりたくないため」「ご家族の今までの生活からの変化を拒否するため」の便利な言い訳に聞こえる時があります。

愛犬にとって何をどうしてあげる事がベストなのか、考えるきっかけにしていただければと思います。